アトリエでは描かない、キッチンペインターな私


2年くらい前に、自分のことを「キッチンペインター」と称したことがあった。


Twitterで友人達と会話していて、何となく自分の絵を描く環境を言葉にしてみたら、こうなったのだ。

今ふと、この造語を思い出し、よく考えてみると、なかなか我が仕事場を表現するのにぴったりなものだったと感心する。

私は描く絵の殆どを台所のダイニングテーブルで描いている。「アトリエや作業部屋で描いているんでしょ?」と、人からよく言われるが、専ら台所だ。私にとって鉛筆で描くことは生活の一部で、ご飯を作ったり、掃除洗濯したりすることと何ら変わりはない。


自分の生活環境が変わる度に、続けるためにどうしたらいいかを考えて、というか、直感でスタイルを変えて順応させてきた。


実は産後は油絵を描こうと志したが、乾燥も遅く、毒性も強い油絵具を小さい子がいる環境で使用するのも嫌だったし、かと言って、水彩だと、乾燥が早く、きちんと描き切るまでは止められない。そうなると、鉛筆が最も自分の環境に最適だった。鉛筆と練り消しとスケッチブックなら、突然鍋が吹きこぼれようが、子がオムツを変えてと泣き叫ぼうが、パッと片付けることができるからだ。そして、私は小さい頃から鉛筆で絵を描くことが好きで、鉛筆が絵描きの夢への入り口だったから。

そして、そんなこんなで生活の中で描く絵は、完成すると生活の一部に溶け込むものだった。

いつも題材は「生活」から生まれる。


例えば、この「コンペイトウ・ナイト」は、幼かった息子が大好きな金平糖からインスピレーションを得たものだ。どこかへ出かけて、子どもへのお土産に金平糖を探している自分の気持ちが、生き物が金平糖を集めている絵になった。……のだろう(笑)

三部作のうち、二点はお客様の元へと旅立ち、一番最初に描いたこの「コンペイトウ・ナイト   サカナ」だけ手元にある。

ずっとしまってあったが、何となく引っ張り出し、そのへんに立てかけてあった。すると、娘や私のパートナーがたまに私の絵を手に取り、思い思いに場所を移動させ、周りに植物を置いたり、ランプを置いたり、石を並べたり……。その様子を見ていると、私の絵は愛されているなぁと感じる。日々の暮らしの一部として、認められる存在なのだと実感した。


生活の中で生まれた私の一枚の絵が、大切なの人たちの心が帰れる場所となり、見ていると何故が落ち着く、そんなものが目指すところだ。

キッチンペインターなら、暮らしにフィットした絵を提供できる。

私の描く絵が、買っていただいた人の暮らしの中でさらに新しい暮らしのスタイルを作り出すことが出来ると嬉しい。

やはり、そうありたい私が、キッチンペインターと名乗ると、とてもしっくりくる。

↑「コンペイトウ・ナイト  かに」

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