抽象絵画は技術がなくても大丈夫?


皆さんは「オートマティスム」という美術用語をご存知でしょうか。


心理学の用語としても知られますが、美術ではシュルレアリスムの芸術家たちによって使用された絵画技法でもあります。


"オートマティスム"
自動筆記なのですが、言葉のとおり、自動で絵を描くことです。自分の意図を入れずして、です。鉛筆なら鉛筆の線の赴くまま、無意識下での手の動きにまかせるわけです。


オートマティスムは一種の抽象表現です。こういった抽象表現はセンスや技術が無くても描ける、と思っている人が多いです。

でもそれは間違いです。

例えばこれはハッチング


長く絵を描いていると、このように何も考えずに出来るようになりますが、それでも多少自分の意図は入りますね。「次のハッチングの場所はどこにするか向きはどうするか。」どうしてもバランスをとってしまいます。


オートマティスムといえば、インクをポタリと落としたピカビアの作品です。インクを落とすだけですから、全く作者の意図が入っていないようですが、「おそらく入っている。入っていないはずがない。」という解釈をする専門家は多いです。要するに、インクを最大限カッコよく落としているはず、ということです(笑)

↑フランシス・ピカビア「聖なる処女」


抽象的な作品であっても、センスと技術が要求されることがお分かりですか?バランスをとったり、意図が入らないと、作者の「メッセージ」が込められないのです。


意図が入って初めて、作品となるのです。


↑マルセル・デュシャン「泉」

「作者の意図が入って初めて作品となる」一番良い例がマルセル・デュシャンのこの作品です。便器にサインを書きなぐっただけのものです。既製の量産品にサインを入れるということで、それを
アートをにしてしまうという、言わば実験的な作品ですね。

話を戻すと、意図を入れていないとされるオートマティスムの技法でも、意図され、センスや技術も要求されるということです。

そしてこの意図、センス、技術が足りない人が描き、描き上がったへんちくりんなものを、へんちくりんだと気づかずに「作品だ」とドヤ顔で発表したりしてしまうのです。

恥ずかしいですね……。

見る人が見たら見抜かれますからね。

オートマティスムを使ったり、その他の抽象的な表現をしていらっしゃる方。

あなたの絵描きとしての資質、足りてますか?


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